■コスティキャンのゲーム論
●「ゲーム」を魅力的なものにする他の要素:
雰囲気
ボードゲーム「モノポリー」は何か具体的なものをシミュレートしているゲー
ムではなく、単純に不動産産業の「世界観」を上乗せしたゲームです。
単純にゲームとしてだけ見れば、非常に抽象的なゲームです。
だから、ボードの絵柄やコマの形などを変え、SFものの雰囲気を持たせた
ゲームに仕立て上げることもできるわけですね。
しかし、「モノポリー」は、不動産産業の世界観、雰囲気を持っているから、
その「独特の魅力」を発揮していると言えます。
(SFの世界観でも魅力は出たかもしれませんが、SFもののボードゲームは
多数あるので、独特さを出すにはひと工夫必要だったでしょうね)
このような、ゲームの世界観や設定を作り「雰囲気」を醸し出すことは、プ
レイヤーをゲームにのめりこませるための重要な要素です。
私も面白いゲームの3要素のうちの1つと考えています。
▼特集「面白いゲームの3要素!」
http://www.n2gdl.net/topics/topic002/002_03.htm
たまに「ゲームはキャラクタがただの英数記号でも面白いものがいいんだ!」
という意見を見ることがあります。
それは確かにそう思うのですが、しかし明らかに雰囲気づくりをしたほうが、
ゲームは盛り上がります。
ゲームは人の各感覚器官を刺激する複合的なメディアですから、より複合的に
刺激できたほうが、よりいいわけです。
さて、人はゲームの内容だけでなく、そのゲームが持つ「雰囲気」で
ゲームを買ってしまうことが多々ありますよね?
例えば私なんかは、黒いサングラスをかけて銃を持った人間が、ジャケット
をひるがえしながら犯人とチェイスを繰り広げる…なんてハードボイルドな雰
囲気のゲームや映画を見ると、「おっ!」と感情を動かされます。
それから、雄たけびをあげて相手に突進していく勇猛な剣士が、火花を散ら
して剣をぶつけ合い、お互い寸前のところで相手の攻撃をよけ、傷を作りなが
ら死闘を繰り返す…みたいなハードなファンタジーの雰囲気も大好きです。
私の中に、そういう雰囲気を察知すると入る「スイッチ」があるんですすね。
ゲームは、実際の世界を忠実にシミュレートすればいいというものではあり
ません。
そのゲームが醸し出す雰囲気が、ゲームの面白さと相乗効果を生み出し、プ
レイヤーの感情を大きく揺さぶれば、それでいいんです。
「プレイヤーの感情を大きく動かす!」こと。
それが実現できれば、ゲームの役割はほぼ終えます。
ただこの「雰囲気」を出すことは、なかなか手間隙のかかる作業です。
単純に見た目だけをそれっぽいものにしただけではだめです。
ゲームの世界観を構築し、「雰囲気」を効果的に出すには、
・視覚
・聴覚
・触覚
それぞれの面から、統一的なアプローチをする必要があります。
重厚なファンタジーの雰囲気を出すなら、重さを感じさせる寒色系の黒っぽ
いデザインにして、陰影ははっきりさせ、音は極力生音に近い音にし、鉄など、
重さを感じさせる音の比率を上げます(どれも、微妙なさじ加減がありますが)。
触覚的にも、操作を扱いづらい鎧のように慣性をつけるようにすれば、「重
い操作感」になります(もちろん、ユーザビリティとの兼ね合いを考慮する必
要があります)。
これがSFならどうでしょう?
時代劇では?
ホラーでは?
どの世界観でも、「雰囲気」を作り出すための視覚・聴覚・触覚的な
アプローチが思い浮かびますよね?
ホラーだったら、ベチャっとした触覚感があったりしそうですよね?
それから、ハードな雰囲気か、ソフトな雰囲気か?
殺伐とした雰囲気か、ほんわか・のほほんな雰囲気か?
出したい雰囲気によって、視覚・聴覚・触覚のチャンネル(分野)が思い浮
かびますよね?
それを意識すれば、見た目だけでない、プレイヤーが感じる全感覚において、
「雰囲気」を構築することができます。
●伝統的な世界観の持つ「雰囲気」
伝統的な世界観とは、例えば、SF、ファンタジー、戦争もの、サスペンス、
などなど、昔から受け継がれてきた世界観をいいます。
こういった世界観は、ある特徴的な「雰囲気」を持っていて、それから反れ
るほど、ファンの心理を掴み損ねてしまう傾向があるようです。
コスティキャンはこれを、ウォーゲームの世界観が持つ伝統的な「雰囲気」
を「アクシス&アライズ」というボードゲームを例にとって示唆しています。
−−−−−−−−
「アクシス&アライズ」が最初にNovaから販売されたときには、ゲームとし
ては後からMilton Bradleyから再販されたものと実質的に何の違いもなかった。
しかし、このオリジナルバージョンは、神をも恐れぬケバい下品なマップと、
今まで私が見たなかでも最悪のカウンター(コマ)を、どうしようもなくダサ
い箱に詰めて売っていたのだ。私はそれを一目見て、すぐにわきにどけてしま
った。以来、このバージョンを見たことは一度もない。
それなのに、Milton Bradley版は、その小さなプラスチックのコマを使って
何度も何度も遊んだものだ。同じゲームなのに、この違いが生ずる理由はただ
1つ、すなわち雰囲気なのだ。
−−−−−−−−
あなたもこのように、世界観と雰囲気で、ゲームを買うか買わないかを決め
てしまったことがあるはずですよね?
伝統的な世界観を扱うときは、その世界観が持つ特徴を捉え、それが織り成
す「雰囲気」を壊さないことです。
しかし、これは感覚的なものでもあり、各個人によって捉える要素がさまざ
まにフィルタリング(選別)されます。
最低限の基本は押さえたら、あとは個人のセンスだと考えたほうがいいでしょ
う。
例えば私なら、それぞれの世界観のジャンルに以下のような「ルール」を盛
り込むのが好きです。
・戦争ものなら、ストイックさ(禁欲的さ)や無情感を前面に出す
・SFなら、科学法則や自然法則が持つ無慈悲で冷徹な側面を保つ
・ファンタジーなら、その世界が持つ伝統や虚構の自然法則によって、世界が
保たれているという部分をあくまで論理的に見せる
・ハードボイルドなら、主人公の抱える虚無感、激情、哀愁を前面に出す
(けっこうハードな世界観が好きなのがバレバレですね)
チームでオリジナルのゲームを作る場合は、こういったことをあらかじめ
メンバーに伝えておくと、その後の進行が楽になりますよ。
→ゲームを分析するときには、「このゲームは、雰囲気を盛り上げ、
背景世界を魅力的にするためにどんな工夫がほどこされているか。
これをより雰囲気たっぷりにするには、どこをどう改善すれば
よいか」ということを考えなければならない。
(続く)
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