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今までこの世に存在しない物を自分の手で製作することは非常に心踊ることであるでしょう。ですが、今までにゲームを製作した経験がある人には理解できると思うのですが、ゲーム製作には生半可な努力ではすまない骨の折れる作業を必要とします。個人的な感覚では、ゲームを製作する時間はゲームを遊ぶ時間の数十倍以上の時間がかかります。 ゲーム製作が製作途中で頓挫したというのはよく聞く話です。私が考えるに、ゲームを製作するときには自己犠牲を払う覚悟が必要なのです。自己犠牲で最低限必要なものは情熱と時間です。もし、自己犠牲を払う覚悟を決めかねて迷っているのであれば、もう少し自分の胸にじっと問うてみるのもいいでしょう。ただ、あらゆることにはリスクが伴いますので、やってみたいのなら飛び込んでみるのもいいかもしれません。 『ゲームで遊ぶこと』と『ゲームを製作すること』は目的がかなり異なることですので、『ゲームで遊ぶのが好き』程度でゲームを製作しても、面白いゲームを作ることは難しいです。というのは、『ゲームで遊ぶこと』の主な目的は自分が楽しむことで、『ゲームを製作すること』の主な目的は他人を楽しませることだからです。他人に面白いゲームだなと思ってもらうためには他人を楽しませる必要があります。 それでも面白いゲームを作りたいと覚悟を決めた人は是非ゲームを製作してください。その際には他人の力を借りて一緒にゲームを製作しようと考えない方がいいでしょう。自分一人でも完成させてみせる、自己を犠牲にしてでもあらゆる困難に立ち向かってみせるという気概が必要なのではないでしょうか。
まずは自分が考えているゲームが完成した時のことを想像(イメージ)してみて下さい。その完成した時のことを明確に想像できるのであれば、ゲームの完成に至るまでに必要なことが何であるかを自然と理解できるでしょう。コンピューターゲームであるならば、基本となるアイデア、プログラム、グラフィック、音楽などはおそらくは必要なものです。ゲームを完成させるためには、その製作経路を頭の中で想像しておくことは重要なのです。 また、ゲームを完成させたいのであれば、明確な目標と動機が必要です。『一体、どんなゲームを製作するのか?』、『何故、そのゲームを製作するのか?』と言ったような問いを自分の中で完結に答えることできなければ、そのゲームが完成することはなかなかないでしょう。というのは、目標と動機は時間が経てば経つほど薄れてしまうからです。特に長期間の製作になってしまうゲームほど明確な目標と動機が必要です。 ゲーム製作においては、ゲームが完成するまでに多岐に渡る作業があります。ゲーム製作がよく頓挫する1つの理由はその多岐に渡る作業を甘く見積もるためです。そのような事態を回避するために、何が必要なのか、何が必要ないのかをよく考えて、完成したときのことを想像することをお勧めします。この工程を怠ると、ゲームが完成しなくなる恐れがあるからです。あなたが製作したいゲームはあなた自身の中にあります。ですので、腰を落ちつけてじっくりと完成した時のことを想像してみましょう。
例えば、『このゲームは約何時間でエンディングを迎えられるのか?』などのようにゲームの製作規模を考えるようなことはゲームの設計書を考えることに他ならないです。もし、ゲームの設計書がずさんなものであったり、まったくなかったりすると、そのゲームはなかなか完成することはないでしょう。何故なら、製作をいくら続けても終わりが見えないからです。そのために製作途中で頓挫する確率も高くなるので、ゲームの設計書は前もってきちんと考えておきましょう。少なくとも製作意図、製作概要、製作規模、製作期間などは必要です。 ただし、前もってゲームの設計書を完璧に考えていたとしても、そのゲームが面白くないということも大いにありうるので、柔軟に対応することを強くお勧めします。面白くないゲームを完成させるより、面白いゲームを完成させる方が良いからです。面白いゲームというのは、度重なる試行錯誤のテストプレイの中から産まれることもよくあります。 製作方法の1つの提案として、ゲームの最初と最後からゲーム製作を始めることを私はお勧めします。というのは、いつ始まって、いつ終わるのかが明確になっていれば、製作途中でも完成に近づいてることが実感としてわかるからです。その実感があるかないかで、製作者にとっての精神的負担は大きく変わってくるでしょう。 自分の能力に応じた設計書を設定することも大切です。まずは小さな設計書のゲームを完成させて、少しずつ着実に設計書を大きくすることをお勧めします。それが無理のない製作方法であり、ゲームが完成する確率が高まる方法でしょう。今現在の自分の実力や力量をよく見極めて、認識しておくことも大切なことです。
思い立ったが吉日とばかりに突然にゲームを製作しようとしても、そのゲームが完成することはあまりありません。特にそのゲームの製作規模が大きければ大きいほど、その傾向は顕著です。ですので、製作が途中で頓挫しないためにも、思いついたゲームのアイデアを何かに書き貯めておくことをお勧めします。 ここで大切なのはアイデアを書き貯めておくことであって、頭の中で考えておくことではありません。人間、誰しもそれほど記憶力が優れているとはいえません。だからこそ、何かに書いておくことが大切なのです。また、1つのアイデアを書き貯めておくことでそのアイデアから派生して素晴らしいアイデアが浮かぶこともよくあるからです。 他の理由としても、アイデアには熟成期間が必要であると私は考えるからです。ある時にひらめいた素晴らしいと思えるアイデアも1晩たってみると、実は陳腐なものであったり、似たようなものが既に出ていることが判明することもよくあることです。ある程度の期間を経てみても、今だに素晴らしいと思えるようなアイデアこそがゲームに必要なのです。 アイデアが十分に書き溜まったところで、ようやく製作に乗り出すという製作姿勢であれば、わりと楽にそのゲームを完成させることができるかと思います。何故なら、ゲーム製作中にその熟成されたアイデアを適切に選んで、自由に使うことができるからです。
ゲーム製作を行う時には必ず様々な制約や条件があります。例えば、情熱、時間、技術、金銭、知識、アイデアなどの制約や条件があります。それ故に頭で考えたすべてのことをゲーム上で実現することはほぼ不可能です。ですので、ゲーム製作の中で実行したいことをリストに書き出して、優先順位をつけておくことをお勧めします。そして、優先順位の低いもの、また、そのゲーム中に実行できそうにないものは思いきって切り捨てることをお勧めします。 ゲーム製作において必要なことは取捨選択です。製作に取りかかる前に考えていたゲームの内容予定の50%程度が実際のゲームで製作されていたなら、それは上出来でしょう。もっと練りこむのなら、10%程度でも構わないと思います。優先順位を考えることは、そのゲームで何を表現したいのかという根本的な意図に焦点をあわせて考えることに他ならないので、この作業は必要不可欠です。 なお、そのゲームで優先順位の関係で切り捨てたアイデア等は続編作に活かすことを考えておけば、ゲーム製作がぐっと楽になると思います。続編作を考えた上でゲーム製作を行う方法も良いかと思います。ドラゴンクエストもそのような発想の下で作られたという話も有名です。
面白いゲームというものには、他のゲームにはないきらりと光る何かがあります。そのきらりと光るものこそがそのゲームの独自性といえます。もし、他の作品で代用できるものであれば、そのゲームは多くの人に必要とされず、遊んでもらうこともあまりないでしょう。つまり、独自性というものはそのゲームが存在する意義ともいえます。だからこそ、あなたが製作するゲームにはあなただけの独自性が必要なのです。 しかし、自分だけの独自性といわれても、何のことだかわからないという方、一体何をゲームの題材をすればいいのか悩んでしまう人もいるかもしれません。率直に言って、自分自身の独自性というのは自分が興味あること、自分が好きなことです。ゲーム以外で興味あることや好きなことを自分のゲームの題材にするのが良いです。その際には一語で言い表せる言葉(名詞)を見つけると良いでしょう。例えば、野球、恋愛、読書、料理、散歩、冒険などなど無数にあります。そのような言葉を核にゲームを製作するのも良いでしょう。 他にもアドバイスとして、歴史的事件のようなものからゲームを製作するのも良いかもしれません。その場合はゲームが社会的メッセージ(伝言)を送り出す担い手となるでしょう。ただし、その際には、その事件に関する詳細に渡る情報とその情報を処理する卓越した能力が必要になるでしょう。具体例でいえば、既にベトナム戦争、キューバ危機などのような事件を中心の題材にしたゲームがあります。
ある高名なゲーム作家の方は『自分が製作したいゲームに関わる主題の本を100冊読んだときに、そのゲームが完成した。』との主旨を言っておられました。まったく、至言だと思います。人間は全くの無から物事を産み出せるわけがありません。ゲームを含むあらゆる作品と呼べるものは多くの過去の作品を元に製作されています。言わば、様々な要素の様々な組み合わせからあらゆるものは成り立っているのです。 ですので、億劫になることなく、自ら進んで様々な知識を貪欲に吸収することを心がけましょう。というのは、知識量が少ないということは、深みのあるゲームが作れないという可能性があるからです。知識を吸収する方法としては、実際に体験してみる、本や映画などを見てみる、いろいろな人の話を聞いてみる、など様々な方法があるかと思います。自分にあった方法を見つけてみましょう。 もし、あなたが楽しんで知識を吸収することができないのならば、その知識に関わるゲームを製作したとしてもそのゲームは面白くないゲームである可能性が高いかもしれません。本当に好きな題材を見つけて、それを活かしてゲームを製作することも大切だと思います。ゲーム製作においては製作者がいかに楽しく製作したのかということも遊び手にすぐに伝わってしまうものなのです。 なお、ゲームで得た知識だけでゲームを製作するのは、面白くないゲームができあがる可能性が高いのでお勧めできません。というのは、面白さという面で、自分の製作するゲームがその知識を得た元のゲームを超える可能性が断然低くなるからです。様々な資料などを熱心に調べ上げて、マニアと呼べるぐらいの知識を得てからゲームを製作する方がよいでしょう。 |
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