■コスティキャンのゲーム論・解説
●「ゲーム」は、ストーリーではない
この定義は、私も昔、
「断じてゲームはストーリーじゃねえ! ゲームで面白いのはそこじゃねー!」
みたいな思いを抱いていたことがあるので、非常に懐かしいですね。
コスティキャンも言っていますが、ゲームは映画や小説から題材をよく借りてくるし、映画的なプロットでゲームが進行していくものが多いです。
(というかRPGはほとんどそうですね)
ドラマティックなシーンをゲームで実現するには、映画や小説からの蓄積を持ってくるこの手法が一番楽で確実なんですね。
もちろん私はそれを否定するつもりはありません。
コスティキャンも、ゲームはストーリーを語ることはない! とは言いますが、否定はしていません。
昔は原理主義的に「ゲームはゲームじゃなきゃだめなんだ!」と思い、ゲームはストーリーの付加されたゲームが多く出回ることによって、誰も根本からシステムアイデアを考えなくなり、ゲームの面白さの切磋琢磨がなくなった!
などと思っていました。
その考えは「Game Design Tips48」をはじめ、ほかのコンテンツにも色濃く
現われていたりします。
▼Game Design Tips48
http://www.n2gdl.net/bookshop/gametips48/gametips48.htm
▼宮本茂論
http://www.n2gdl.net/bookshop/miyamoto/index.html
ゲームの面白さの切磋琢磨がなくなった。
実際、そうだと思いはしますが、それも「折り込み済みで」ゲームを考える
のがプロだ、と思うようになりました。
誰もやらないなら、自分だけができます。
(誰も考えずジャンルの上にただ乗ったものばかりができるなら、そのヒットチャンスは侵食されずに済むというもの)
根っこのシステムを作るというのは、ジャンルを作るということ。
ジャンル(シーズ)を作る、なんてのは、恐ろしくて誰もチャレンジしない部分なのかもしれません。
そういえば先日のGDCで、ウィル・ライト氏も
「ストーリーよりプレーヤーの体験を重視すべき」
などとゲーム観を語っています。
▼Game Developers Conference 2005現地レポート
ウィル・ライト氏が未来構想を語る「The Future of Content」
ライト氏のライフワーク「SPORE」で実演したプロシージャルな世界
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050313/gdc_will.htm
これも要するに、ゲーム原理主義的な考え方ですね。
(それにしてもウィル・ライト氏は子供のころに考えるような壮大なゲームを現実にしようとするとは…凄すぎです)
確かにゲームの特質とは、「誰かの体験をなぞる」ことではなく、「自分が経験する」ことにあります。
そこには映画や小説にはない、ゲーム独自の強烈で危ない「経験」があるわけで、まだまだ掘り下げられていない部分なんですよね。
根本的なシステムアイデアをもっと試行錯誤すれば、ゲームの面白さの地平はまだまだ広がっていることが明らかになる…などと個人的には思っています。
(最後は「マトリックス」なんですが(笑))
話がそれましたね。
で、コスティキャンは、
「ストーリーは、もともと直線的なものである」
と言い、そして直線的であるが故に、計算されたイベント配置ができる強みが
あると言います。
これはわかりやすいですよね?
そして、
「これに対して、ゲームはそもそも直線的ではない」
と言います。
要するに、ゲームとはどうなるかわからないところで下す合理的な「意思決定」が面白いのであって、それがストーリーのように正解を強制的に選ばされるなら、それはゲームではない、というわけです。
目的に対して、AとB、どちらの選択も間違いではない。
山登りで言えば、どのコースを通っても頂上につけばいい。
ただコースは切り立った崖もあれば、くねくねと時間だけがかかる道もある。
その選択が個人よって自由だからこそ、面白い。
いったん頂上に登ったなら、より難度の高い崖に「チャレンジ」することが
できる。
それは、より高い達成感を感じることができる、という判断からすれば、しごく合理的なわけです。
ゲームは経験をデザインする。
瞬間瞬間の選択によって、刻々と様々な状況が生まれるダイナミズム(力強さ)。
(これは私たちが生きている世界では当たり前のことであって、その「経験」を計算することが、ゲームデザイナーの役割の1つである! と思います)
それがゲームの本来的な面白さである! と言いたい。
→「ストーリー」は直線的である。「ゲーム」はそうではない。
(続く)
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