● バッドエンドを作る
ではそろそろあれを作っていきたいと思います。そう選択肢です。
ノベル“ゲーム”なのですからこれがないと始まりません。
で、これとセットになってくるのが、サブルート、あるいはバッドエンドです。
サブルートなどというとなにか副次的なものだというイメージが沸きますが、実のところこれの面白さによってゲームの面白さが決定すると言ってもいいと思います。
なぜかといいますと、ゲームはまず最初は間違ったルート、つまりサブルートを選択することになります。いきなりベストなエンディングを迎えてしまってはゲームとしては面白くもなんともありませんからそのように設計すべきでしょう。
つまりユーザーのファーストコンタクトはサブルート、あるいはバッドエンドということになります。つまりこれの面白さこそがその後にもっとこのゲームを続けるか、あるいはやめてしまうかの指針となるというわけです。
こう断言してもいいと思います。サブルートはむしろメインルートよりも格上である! より面白く書く必要がある! と。
では、面白いバッドエンドとはどんなのでしょう? まあ、皮肉の効いた衝撃的、且つ悲惨なのがいいでしょうね、ホラーなので。
悲惨な話といえば都市伝説にそんな話が多いですね、都市伝説というのは、自然淘汰のなかから生き残った面白さの優等遺伝子を持った物語なので、研究する価値はあると思います。
悲惨といえばこんなのはどうでしょう。
バッドエンド案@
太郎はロボットと思って動く影を銃で撃った。しかしそれはロボットではなかった、なんとそれは圭子だったのだ! 暗くて見分けがつかなかったのだ。 |
勘違いによって自分の好きな人を自分の手によって殺してしまう。いや〜皮肉で悲惨ですね〜。
人間には生まれながらに持った嫌悪感、タブーのようなものがあります。これを知らずに行ってしまった場合にもかなりの悲惨な話を作ることが出来ると思います。
ではそれらを踏まえて悲惨なバッドエンドを作成してみたいと思います。
バッドエンド案A
太郎は圭子とはぐれてしまった。方々捜し歩いたが見つからない、だんだんと疲れてきておなかも減ってきた。
ある部屋のドアを開けると、そこは食堂だった。とてもいいにおいがしてきた。ここの食事はすべてオートメーションで作られており、ボタンひとつで料理を作れるようになっていた。
太郎は我慢できずにそれらの機械のボタンを押した。すると何か声のようなものが聞こえた。気のせいだろうか?
しばらくするとハンバーグが機械から出てきた。太郎はそれを食べる。味は大変美味だった。
半分ほど食べた頃、歯に何かがカチンとあたった。それは吐き出すと、それは指輪だった。
その指輪は圭子がはめていたものだった。
つまりこういうことだ、ロボットが圭子を捕らえてここの料理の機械に放り込んだんだ!
つまりこのハンバーグは圭子なのだ! |
かなり気分の悪くなる話ですが、人食に対する嫌悪を織り込んでみました。
こんな調子でいくつか衝撃的なバッドエンドを作ってみます。
● 選択肢の作成
バッドエンドとセットで考えるのが選択肢となります。
選択肢を考えるのって結構むずかしいですね。たとえば道が二つに分かれていて、右に行くか、左に行くか、なんて選択肢があってもなにを基準にして考えればいいか分かりません。
つまり事前に何らかのヒントが与えられてあって、そのヒントを正しく理解するとおのずとどの選択肢を選べばいいかが分かるというのがいいと思います。推理型選択肢とでも呼びましょうか。
しかしこういうのはめちゃんこ作るのがむずかしいんですよ。ヒントと言ってもなにをヒントとして出せばいいかが難しいんですよね。推理物だとまだ思考のプロセスをシュミレートするというのも作れますが、それでも1から10までそんな選択肢だと結構作るのもやるもの疲れます。
そこで選択肢をあくまで伏線として考えます。つまりバッドエンドから発想して、プレーヤーに「あ、あの選択肢はそういう意味だったのだ!」と後から気づかせるようなものを作ってみたいと思います。これを伏線型選択肢とでも名付けましょう。
たとえば上記のバッドエンドの場合、太郎は圭子とはぐれる。圭子がロボットに捕らえられて料理の機械に放り込まれる。太郎がハンバーグを食べる。という三つのポイントが考えられます。
○一、太郎が圭子と別行動をとる。
○二、圭子がロボットに捕まり料理マシンに放り込まれる要因
○三、太郎がハンバーグを食べる
つまりこの三つの要素をすべて選択してしまうと上記のバッドエンドに突入してしまうとなるように設計するようにします。
第三は単純に料理マシンを作動させるかさせないか、料理を食べるか食べないか、あるいはハンバーグを食べるかほかのものを食べるか、等々の選択肢でいいと思います。
第一は圭子との関係のパラメーターで制御してもいいですね、つまりあまり圭子につれない態度をとると別行動をする羽目になるとか。
二番目、「圭子がロボットに捕まり料理マシンに放り込まれる要因」とはいったいなんでしょう。悪い要因というのはだいたの場合問題の解決を怠る、あるいは放置をしてしまった場合に発生します。つまりこの場合も太郎がしかるべき必要なことをしなかったためにこうなったということにします。
圭子を捕まえるロボットを事前に倒しておかなかった。またそして圭子にロボット対抗しうる武器を渡しておかなかった。等々の複合的ミステイクの結果、圭子はロボットに捕まり料理マシンに放り込まれてしまうことになるようにしてみましょう。
「生きるべきか死ぬべきか、それが選択肢だ」
by シェイクスピア |
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● フローチャートによる難易度の制御
選択肢によってどんどん分岐していき、いろいろなルートに突入してそれらのエンドを迎えるわけですが、このようにいうと、ケヤキの枝か生物の進化図のようなものを想像しますが、実際にはこのようにいちいち分岐していけば作業量が膨大になってしまいます。
そこでメインのルートがひとつ存在し、よっぽどのことがない限り、そのルートに引き戻されるような設計をします
フローチャート例@
@というのが選択肢で、“A”と“B”がその結果だと考えてください。
この場合“A”を“B”は到達確立が五分五分だということになります。もっともオーソドックスな形ですね。
では続いて
フローチャート例A
@
┏┻┓
┃ A
┃┏┻┓
┣┛ ┃
┃ B
A |
@とAが選択肢です。二つ出現しました。この場合@で五分五分、Aでも五分五分の確率で分岐しますからAへの到達確率は50+25%で75%、Bは残りの25%ということになります。
つまりこのような方法であるルートへ突入する確率を制御できるということです。あまり簡単にゲームオーバーになったり、また解決してしまっては面白くないので、このような方法で難易度を制御します。
ではもっと複雑にしてみます。
フローチャート例C
@
┏┻┓
┃ A
┃┏┻┓
┣┛ B
┃ ┏┻┓
┃ C ┃
┃┏┻┓C
┣┛ ┃
┃ B
A
|
この場合各到達確率はA:81.25%、B:6.25%、C12.5%となります。
● エピローグを作る
アメリカングラフィテーとスタンドバイミーという映画があります。この二つにはある共通点があります。それは若者の青春の一コマを描いているというところです。
それともう一点あります。それはラストにそれぞれの登場人物のその後の人生がエピローグとしてが語られるという点です。そしてそれはほとんどの場合後味のいいものではありません。人生において幸せと掴むことの難しさを思い知らされるようななんとも切ないラストになっています。
誰でもあのときああしとけばよかったといったような後悔があるとおもいます。小さな原因によって人生が大きく変わるということはありえると思います。バタフライ効果とかカオス理論、といった感じですね。
個人的な意見としてノベルゲームというのはこのようなダイナミックな人生の機微を大きなスパンで描くのに向いているのではないかと思うのです。チョットした選択の違いから未来が大きく変わってしまう。それを感じることができるのがノベルゲームの醍醐味だとおもいます。
恋愛シュミレーションなどで、パラメーターの制御でどの女の子と仲良くなれるかといった感じのものがありますが、このような感じで、パラメーターによってエピローグが変わるといった展開にするのはどうかと考えています。
ロボットが人間を襲うという話なので、ロボットと人間の関係のその後の展開をエピローグとして語るというのはどうでしょう。
ではちょっと考えてみたいと思います。
エピローグ案
○長いロボット対人間の戦争が起こる。たくさんの犠牲を払って何とか人類はロボットを駆逐することに成功した。しかしその代償はあまりにも大きなものだった。
○千年にも及ぶ全面戦争の末、和平交渉を締結し、ロボットも人間と同じ権利を得る。
○ロボットによる政府が樹立し、人間は奴隷としての身分を受け入れることで存続を許される。
○ロボットによる人間虐殺が展開されたが、一部の人間は生き残り、その後ゲリラ戦を展開するが、玉砕を覚悟でロボットに立ち向かい、地球上からロボットも人類も消滅する。
○人間はロボット達によって虐殺され、地球上から人間がいなくなり、ロボットによる文明が始まる。
○人間は何とかロボットを駆逐しようとするが、主人公がロボットに寝返り主人公はその見返りとして皇帝としてロボット帝国を樹立する。
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エピローグは長々と語るのではなく、文章は数行であるいは何枚かのイメージを提示することで、なんとなくこうなったんだなと印象つけることが出来ればそれでいいと思います。それならそんなに作るのは大変ではありません。
その分たくさんのバリエーションを考えて、何度もプレイしても違うエピローグが楽しめるといった感じにしたものです。
(続く) |